成人年齢引き下げで性同一性障害の治療や戸籍変更の年齢条件はどう変わる?

民法の改正により、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられ、4月から施行されますね。
この影響により、性同一性障害を理由に戸籍の性別を変えられる年齢も引き下げられます。

身体的な治療にも年齢制限が設けられていますが、今回の影響により年齢制限が引き下がることはあるのでしょうか?

戸籍の性別要件を改めて確認しながら、その他の治療についての年齢制限などについてみていきましょう。

目次

戸籍変更の要件が変わる

性同一性障害の人が戸籍の性別を変えるための要件は「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」に定められています。
そこに記載されている戸籍の性別を変更するための条件は下記のとおりです。

①必要な知識及び経験を有する2名以上の医師から「性同一性障害」であることの診断を受けていること
②二十歳以上であること
③現に婚姻をしていないこと
④現に未成年の子がいないこと
⑤生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永久的に欠く状態にあること
⑥変更後の性別の性器に近似する外観を備えていること

この中の「②二十歳以上であること」
ここが、「十八歳」に変わることが決まっています。

そして「④現に未成年の子がいないこと」の未成年も18歳未満となります。


日本では成人を「ニ十歳」としている法律が多数あるため、成人年齢引き下げとともに条文を変更する必要性が生じました。
「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」もそのうちの1つです。

今後は18歳以上で、その他の条件を満たせば性別変更の申し立てができるようになります。

身体的治療の基準は?

性同一性障害の人がホル注や性別適合手術をする際にも年齢による条件が存在します。
戸籍の性別変更の年齢条件引き下げにより、治療に関しての年齢制限には影響があるのでしょうか?

結論、今のところ年齢条件を引き下げるというような見解は出ていません。
4月からも現状通りとなりそうです。

現状、性同一性障害の治療は「性同一性障害に関する診療と治療のガイドライン」に基づいて進められることがほとんど。
ガイドラインでは、ホル注治療の最低年齢条件は15歳とされています。
ただし18歳未満の場合には、慎重な判断や経過観察が必要とされ、開始の条件が少し厳しくなっています。

また胸オペは18歳以上が条件です。合わせて「18歳以上の未成年は法定代理人(親など)の同意を必要とする」と書かれていますが、18歳以上が成人となるため4月以降は18歳以上であれば親などの同意は必要なくなります。

性別適合手術に関しては現状20歳以上となっています。
この性別適合手術の年齢条件が18歳に引き下げられるという見解は今のところ出ていないので注意してください。


ただ戸籍変更可能な年齢条件が18歳。
そして戸籍変更をするためには性別適合手術が必要、ということを考えるとここが18歳に引き下げられる可能性ありそうですね。
ただ性別適合手術を行うためには、概ねホルモン治療を1年以上受けていることが求められます。
現状18歳未満は慎重な判断が求められるとされており、ホル注を受けるハードルが高くなっています。
そのためそこも引き下げられないと、性別適合手術を18歳で行うことも難しくなるということになり、芋づる式に年齢制限を引き下げる必要が生じてきます。


早期の治療には賛否両論あります。
個人的には早期の治療実現により、選択肢が増えるのはいいことだと思います。

ただし治療は不可逆的なもの。専門家、当事者の慎重な判断が求められるのも事実です。
身体的治療の年齢制限は、本人の意思能力だけでなく若年の身体に関する医学的な見地も関係してくるため、法律的に成人年齢が下がったからと言って、簡単に引き下げられるものではないということは理解しておかなければなりませんね。

※大前提としてガイドラインは強制的なものではありませんので、年齢制限も無視しようと思えばできてしまいます。
ただしきちんとした病院はガイドラインに準拠して治療をおこなっており、満たしてない場合にはホル注や手術などに対応してくれません。
ガイドラインは日本全国の専門家が集結して策定したもの。
安心して治療を行いたい場合には、ガイドラインに準拠して治療を行うことをオススメします。

戸籍変更の他の条件の見直しは現状無し

先ほど見たように年齢制限の他にも戸籍変更には条件があります。
もう一度おさらいしましょう。

①必要な知識及び経験を有する2名以上の医師から「性同一性障害」であることの診断を受けていること
②二十歳以上であること
③現に婚姻をしていないこと
④現に未成年の子がいないこと
⑤生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永久的に欠く状態にあること
⑥変更後の性別の性器に近似する外観を備えていること

この条件のうち「⑤生殖腺がないこと又は生殖腺の機能は永久的に欠く状態にあること」という条件は以前から見直しの議論されています。
違憲性が問われた裁判では「合憲」とされましたが、裁判官は生殖機能を失うことを条件とするこの条件は違憲の疑いが生じているという一言も付け加えています。

今回の成人年齢引き下げによる、年齢制限の改正と同時にその部分が見直されるのでは?という希望もあったものの、それは叶わず。
LGBT法連合会はこの件に関して「遺憾の意を表明する」としています。
参考:https://lgbtetc.jp/news/1234/

まとめ

成人年齢の引き下げによる、性同一性障害の戸籍変更や身体的治療の年齢制限の動きを見てきました。
まとめると次の通りです。

・成人年齢の引き下げにより、戸籍の性別変更の年齢条件が20歳から18歳に
・身体的治療に関しては、成人年齢の引き下げによる影響は現状無し
・年齢以外の戸籍変更条件には、まだまだ課題が残っている

もしガイドラインにおいて、年齢制限の引き下げなどの改定があったら、このサイトやTwitterですぐにお知らせします。

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