冠婚葬祭の中でも突然訪れる「葬」の機会。
葬儀です。
トランスジェンダーの方が亡くなった際に「どのように弔われるのか」ふと心配になることはありませんか?
また他の人の葬儀に参列するとき、どのような服装で行ったらいいのか迷うこともあるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、トランスジェンダーの方が亡くなった際に希望の性で弔われるようにする方法と、葬儀に参列するときの服装についてご紹介します。
トランスジェンダーが亡くなったときの葬儀
どちらの性で弔われる?
トランスジェンダーの方が心配することの1つに、死んだときはどっちの性で弔われるのか。
特にカミングアウトもしていない、治療もしていない、という状況だとどうなるものなのか考えてしまいますね。
死んでしまえば特に気にする必要はないと言えばそれまでですが…。
出来れば本来の自認する性で弔われたい、と考える方の方が多いのではないでしょうか。
戒名は男女どっち?
仏教の多くの宗派で、亡くなったら戒名がつけられます。もちろん付けなくても大丈夫です。
戒名は男女で違いがあり、残念ながらジェンダーレスな戒名はありません。
男性であれば、位の低い順に「信士」⇒「居士」⇒「院居士」、女性であれば「信女」⇒「大姉」⇒「院大姉」となります。
カミングアウトおよび戸籍変更さえ済んでいれば、特に問題なく移行後の性別の戒名がつけられるでしょう。
しかしカミングアウトをしていない場合、自分の死後、元々の戸籍上の性別の戒名がつけられる可能性もあります。
戒名に関しても「死んじゃえばなんでもいい」と考えれてしまえば気にすることはありませんが、そうではない場合には対策を打っておく必要がありますね。
それでは解決案をご紹介します。
家族にカミングアウトしておく
一番確実なのは、家族にカミングアウトをしておくことです。
そして万が一の際にも自分のことは自認している性で弔ってほしいという旨を伝えておきましょう。
とはいえ「それが一番ハードル高いんだよ」「それができればそもそも悩んでないよ」という方が多いかもしれません。
その場合の対策をいくつか紹介しておきます。
お坊さんに相談しておく
お墓があるお寺のお坊さん、ない場合には自分の宗派のお坊さんをお坊さん紹介サイトなどで探して、相談をしておきます。
お坊さんに事情を説明、自分にもしものことが会ったときには自認する性で弔ってほしい旨をお伝えしましょう。
お坊さんにはそれを拒む権利もありませんし、徳のあるちゃんとしたお坊さんであれば大抵は聞き入れてくれます。
ただしここからが重要で、もしもの際には「このお坊さんに連絡をしてほしい」という旨はどこかに残しておかなければいけません。
パートナーに託しておく
パートナーがいれば、パートナーに託しておくのが一番いいでしょう。
自分の事情を理解してくれているパートナーであれば、万が一の際にも希望するように対処してくれるでしょう。
エンディングノートを書いておく
エンディングノートを書いておいて、もしもの際に見つけてもらえるようなところにしまっておくのも1つの方法です。
「エンディングノートなんて早くない?」と思う方が多いでしょうが、人生いつ何があるか分かりません。
エンディングノートは自分の人生を振り返るいいツールでもあるので、若いうちから書いておくことをオススメします。
相談しているお坊さんやパートナー、友人などがいる場合にはその人の名前や連絡先を必ず書いておきましょう。
そして自分の希望もしっかりと記載しておきます。
ちなみに戒名男/女と別れていることや、そもそもどちらかしかないということに対して、仏教界でも問題視する声が上がってきています。
そこで「人」という字を使って「信人」「真人(しんじん)」「道人(どうじん)」という戒名を使うことも提案されています。
FTMが葬儀に参列するとき
次は他の人の葬儀に参列する際の服装についてです。
喪服に限らず、正式な礼装にはユニセックスが存在しないのが現実です。
それについて「正装にはユニセックスが存在しない。つまり社会的にちゃんとした人と評価されるためには明確に性があることが必要なのか?」と疑問を投げかけている記事があり、興味深かったためこちらにリンクを置いておきます。
【関連記事】現代ビジネス「愛する人の死に「男性用喪服」を着るべきか、私は葛藤している」
その問題はさておき、どのような服装で葬儀に参列をしたらいいでしょうか?
昨今では家族葬など身内だけの葬儀が多くなり、正式な礼装を求められることは少ないので対処のしようはたくさんあります。
ただ葬儀は自己主張をする場ではありません。
節度、礼節を守り遺族に失礼のないようにだけは注意しましょう。
逆に言うと、あまりに変な格好さえしていなければ目立つことはありませんので、その場では堂々と自然に立ち振る舞いましょう。
カミングアウトしている場合
周りへのカミングアウトがすんでいる場合には、通常の男性の喪服や略喪服で参列しても問題はないと思われます。
通夜であれば、黒または濃紺のダークスーツでもOKです。
サイズがない、という方は一生でこれを機に一着は自分に合うフォーマルスーツを作っておいてもいいかもしれません。
カミングアウトしていない場合
カミングアウトをしていないから男性用の喪服も着づらい、だからって女性のワンピースやアンサンブルは着たくない、という場合が最も難しいところだと思います。
その場合には黒無地のパンツスーツで問題ありません。黒か白のブラウスまたは白いシャツを合わせておけば全くマナー違反にはならないので安心してください。
このようなブラックフォーマルのパンツスーツなら、着やすいのではないでしょうか。
まとめ
トランスジェンダーの方が亡くなったあと希望の性で弔われる方法、そして参列する際の服装についてご紹介しました。
まとめると次の通りです。
- トランスジェンダーの方が亡くなった際、どの性で弔われるかはカミングアウトや治療の状況による。
- 現状、仏教の戒名は男女で違いがあり、ジェンダーレスなものは存在しない。しかしそれが問題視され新たな戒名の形が提案されている。
- 事前対策として家族へのカミングアウトやお坊さんへの、パートナーへの相談、エンディングノートの作成などが挙げられる。
- 他の人の葬儀に参列する際は自己主張は控えて、節度を保つことが大切。
- カミングアウトしている場合は男性の喪服での参列、していない場合はブラックフォーマルのパンツスーツがオススメ。
一生に何度もあることではありませんが、いざという時のために準備はしておきましょう。
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