性同一性障害の治療でカウンセリングが終了し、いよいよ診断書をもらう、という段階になると医者から
「身体検査をしてきてください」と指示をされます。
「身体検査?なにするの?」「性自認の問題なのになぜ身体検査?」と戸惑うあなたに、性同一性障害の治療における身体検査の意味と、検査内容やその費用について解説します。
なぜ身体検査が必要なの?
性同一性障害とは「性自認」という精神的な問題にも関わらずなぜ身体検査が必要なのでしょうか?
それは「生物学的に、身体は正常である」ことを証明するためです。
身体の性別を判定する過程は「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」に定められています。
うつ病などのカウンセリングでも、まずは身体的な異常が原因ではないかを調べるために血液検査などを行います。
そして身体的には異常がない、精神的な問題だと認定してカウンセリングを進めますが、それと似た発想です。
人は受精時、そして胎内で性分化が行われて身体の性別が決まります。その性分化の段階で何らかの異常が発生することも。
それが「性分化疾患」です。
性同一性障害の診断を下すために、性分化疾患などの身体の異常ではなく「性自認」という精神的な問題であるということを証明するために身体検査を行うのです。
FTMであれば「生物学的・身体的には、れっきとした女性である」、MTFであれば「生物学的・身体的には、れっきとした男性である」ということを、証明するのがこの身体検査です。
どんな検査をするの?
では具体的に「身体検査」とはどのような検査なのでしょうか?
「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」には、染色体検査、ホルモン検査、内性器並びに外性器の診察並びに検査、その他担当する医師が必要と認める検査をすることとされています。
身体的性別に関する以上の有無が分かれば、書いてあるすべての検査をする必要はないとも明記されています。
それではそれぞれについて検査なのかを解説します。
染色体検査
染色体検査は、その名の通り、染色体に異常がないかを診断するもので血液検査によって行われます。
ヒトの染色体は基本的に46本。2本組で23対になっています。そのうちの1対が「性染色体」と呼ばれる、遺伝子レベルでの性別を決定づける要素となります。
その性染色体が「XY」であれば男性、「XX」であれば女性です。
しかしこれが何らかの異常により「X」単体となったり、「XXY」とXが多い状態になることがあります。
このような異常がないかどうかを調べるために行われるのが、染色体検査です。
ホルモン検査
こちらも血液検査によって行われるものです。
男性ホルモン、女性ホルモンの分泌機能に異常がないかを調べます。
内性器および外性器の診察
内性器や外性器に異常がないかを調べます。
基本的には触診によるものです。
FTMであれば、膣内や子宮内などに問題がないかを触診し、場合によっては細胞をとって検査をすることもあります。
MTFであれば、陰茎や陰嚢に問題がないかを触診します。
当事者にとってはかなりの苦痛の時間になりますが、今後の身体的治療に進むためのステップなので我慢をします。
どこで検査をするの?
FTMであれば産婦人科に行きます。(これがまぁまぁ地獄の時間です。待合室でも触診の際も……。診断書をゲットして治療を進めるため、と割り切って我慢です。)
MTFであれば泌尿科です。
カウンセリングを受けている病院から紹介状を書いてもらえる場合も多いので、相談をしてみましょう。
身体検査の費用はいくらぐらい?
全ての検査にかかる費用は、病院によって異なりますが1~2万ほどは見ておくと安心です。
それに加えて診断書発行代もかかります。
「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」で、身体に異常がないことを書面にて提出をしなければならないためです。
それは大した金額にはならないので、そこまで気にする必要はありません。
異常が見つかりさらなる検査、となることも想定して、身体検査の際には5万円ほど持っておけば、ひとまずは大丈夫です。
性同一性障害の身体的治療に進むための、身体検査について解説しました。
繰り返しになってしまいますが、まぁまぁしんどい時間にはなりますが、1日キリ、次の身体的治療に進むための重要なステップとして、頑張って乗り越えましょう!
コメント