性同一性障害の治療のためにカウンセリングに行くとまず「自分史を書いてきてください」との指示があります。
ここでは「自分史ってなに?」「何を書いたらいいの?」と困っている方に、詳しい書き方を紹介します。
ダウンロードして使えるテンプレートも用意しています。参考にしてみてください。
性同一性障害治療の「自分史」とは?
自分史とは、自分の歴史を文章化したものです。
性同一性障害の治療では、その人の人生を全体像を把握し、今後どのような性でどのように生きていくかを決めていくための大切な参考資料になります。
性同一性障害の治療に限らずとも、今後の人生の指針を決めるために自分の人生で起こった出来事を思い返し、可視化する作業はとてもいい機会。
「ちょっとめんどくさい」「それよりも早く治療を進めたい」という気持ちも分かりますが、いずれにせよ書いて出さないと治療が進みません。いい機会だと思ってしっかり書いてみましょう。
「自分史」の書き方
では、具体的に自分史をどのように書いたらいいのかを解説します。
最後にはテンプレートを用意しているので、そちらも活用してみてください。
性同一性障害のカウンセリングで用いる自分史には主に「生活環境」と「性にまつわる出来事」に焦点を当てます。
具体的に項目ごとに解説します。
家庭環境
生活環境の基礎となる、家族構成・家庭環境を記載します。両親・兄弟、一緒に住んでいるその他の家族について、続柄・年齢・職業・性格・自分との関係性などをまず表や箇条書きします。
続柄 | 年齢 | 職業 | 自分との関係性 |
父 | 45 | 会社員 | カミングアウトできずにいる |
母 | 46 | 主婦 | カミングアウトできずにいる。察している様子はある |
兄 | 21 | 大学生 | カミングアウト済。よく相談に乗ってもらっている |
記載するのはだいたいこれぐらいのことで問題ありません。医師によっては、カウンセリングの際にここに書かれた情報をもとに詳しい職業や、関係性について深く聞かれます。
原則として先生から親に勝手に見せたりすることはないので、正直なことを書いて問題ありません。
そして家庭ではどのような教育を受けてきたか、家族同士の関係性なども合わせて記載します。
既往歴
今までの病気に関わる履歴を記載します。
特に大きな病気をしていなければ「特に無し」でOKです。
生活歴
幼いころに好きだったもの、好きだった遊び、どんな人と遊んでいたか、どんな服を好んで着ていたか?
など日常生活に関わることを振り返って書きます。
また七五三などのイベントに対して当時思ったことや、実際にとった行動なども振り返ってみるといいでしょう。
学生時代の生活など
学校での生活状況を書き出していきましょう。小・中・高で時代ごとに分けて書いていくと良いと思います。
例えば、制服について、当時着ていた制服や感情(嫌だったとか)、実際の行動(周りに言えず、我慢して履いていたなど)を書くようにしていきます。学校生活で性に関わる嫌だったことや疑問を感じていたことなどを書きだしていきましょう。
性に関する履歴
ここからは、性同一性障害のカウンセリング独自の項目です。
性に関して、これまで思ったことや実際にとった行動を書いて、今後どのように生きていきたいと思っているかについて触れます。
書く内容は、おおむね次の通りです。
幼少期
自分の身体や、性別にまつわる周りからの扱われ方に対して、思っていたことがあれば書きます。
特に覚えていることがなければ、詳しく書く必要はありませんが、できるだけ振り返ってみましょう。
第二次性徴について
性同一性障害の方の多くが違和感や嫌悪感を感じる、第二次性徴。
それを迎えたときの状況を書きます。どのように自分の身体が変化して、それに対してどう思ったか、実際にどのような行動をとったのか。
また、初潮や精通をどう思ったか、それに対してどのような行動をとったのかなどを思い返して書きます。
恋愛歴や性歴
「そんなことも書くの?恥ずかしい」そう思うかもしれません。
でも恋愛歴や性に関する履歴は性同一性障害のカウンセリングにはとても重要な項目。勝手に他人に見せられることは無いので、思い返して書いていきましょう。(※医師にも見られたくない場合は、一旦書かずに提出しても良いです。)
好きになった対象の性別、その人に対してどんな行動をとったのか、どのように進展をしたか。そして性交渉の有無、自慰行為についてなども書ける方は書いていきましょう。
性歴に関しては、性別に違和感を覚えた時期、それに対してどんな行動をとったか、現在の治療の有無(カウンセリング前に独自でホルモン注射や手術をした人、他の病院でもカウンセリング済みの場合はその状況について書きます。)
最後、今後どのような性でどのような生活を歩んでいきたいか、について自分の考えを書きます。
「決まり」はない
以上はあくまでも一例としてあげた項目です。
「こう書かなければならない」という決まりはありません。基本的には時系列に沿って書くのが一番書きやすいかと思います。
項目や、どのくらい詳細に書かなければならないか?は、専門医によって異なります。
「できるだけ詳細に書いてください」というところもあれば「箇条書きで簡単にでいいです」というところも。
そのため、指示を受けた際に「どんなことを、どのくらい書いたらいいですか?」と確認することをオススメします。
場合によってはテンプレをもらえることもあるので、そちらを活用してください。
「テンプレもないし、どう書いたらいいか分からない」という場合には、テンプレを用意したのでぜひ使ってください。これも全てこの通りに書かなければいけないという訳ではないので、気楽に書いてくださいね。
コメント